さまざまなビジネスが日夜うまれている。それはデジタル分野だけでなく、アナログなものづくりの世界でも起こっている。このコラムでは、これまでの業界の常識を変え、世の中を変えようとする取り組みを紹介する。

あなたの「強み」を判定する4つのポイント
カテゴリー:ビジネス

あなたの「強み」を教えて下さい。そのような質問をして、適切な答えを得られることは少ないです。特に、就職や転職の際の履歴書を書くときの「長所」がこれと同じことを意味していますが、なかなか難しいものです。

それは、会社を主語にしても同じです。たとえば、御社の強みは何ですか?と聞いて、「無借金経営」や「社員の接客スキルの高さ」という答えがかえってくることがあります。これらは本当に強みなのでしょうか。客観的に自分たちの「強み、弱み」を分析するは案外難しいものです。

そこで、今回はこのことを、経営学的にシロクロつける方法として、判断基準であるVRIO(ブリオ)を紹介しましょう。VRIOは、資源ベースの経営戦略論の大家バーニーによって提唱された、強いをチェックするための手法です。それぞれ4つのチェック事項(V、R、I、O)の頭文字をとったものです。内容については図に譲りますが、これら4つの質問に答えることで、自社の強みをあぶりだせます。なおバーニーの原著で紹介されている方法は、もう少し複雑なチェック内容となっていますが、操作性を重視して川上がシンプルにしたものを紹介します。

結論として、これらのうち一つにでも☓がつけば、その項目は強みではありません。少し甘く評価しても、VRIのうちのどれかに☓がつけば、強みとは判定できません。強みでないということは、むしろ弱みであると厳格に考えたほうがよいくらいです。まずはこの図にそって、あなたが強みだと思っている「資源」、具体的にはヒト、モノ、カネ、情報の特徴を判定してみてください。

いかがでしたか。すべてに◯がつく「本当の強み」はありましたか?この基準に当てはめると、なかなか強みは見つからず、げんなりしてしまうものです。しかし、この分析はみなさんをがっかりさせることが目的ではありません。どうやったら、あなたのもっているその資源を強みに変えられるのか、それを考えるためにあります。

ちなみに、「無借金経営」は稀少でもなく、その気になれば他社も真似できるので、強みにはなりません。ただし、それが「ディスカウント小売業」にとって、大量に安く仕入れるための強力な武器にできるのではあれば、話は違ってきます。そのときは、無借金経営ではなく、「サプライヤとの信頼関係」というテーマに置き換えてみてください。もっと大切なことが見えてくるはずです。

「社員の接客スキルの高さ」もそのままでは、稀少でも真似にしくいわけでもありません。接客業であれば、当然に必要なことです。それに、とりわけ元気な従業員であれば引き抜きに合うかもしれません。なおさら模倣は簡単です。しかし、これを組織的に、全員が同じレベルで接客できる教育システムや仕組みがあれば稀少で真似しにくいものとなるでしょう。事実、オリエンタルランドやリッツカールトンの接客は、そのレベルで仕組み化されているので強みとなっています。

このように、個人であれ会社であれ、強みを議論するときには、一度VRIOのフィルターに通してみてください。意外と思っていたものが強みではないというショッキングな結果が出るかもしれません。しかし、それで一喜一憂せず、それをどういうふうに変換すれば、強みにかえれるのか、という建設的な議論をするように心がけたいものですね。