さまざまなビジネスが日夜うまれている。それはデジタル分野だけでなく、アナログなものづくりの世界でも起こっている。このコラムでは、これまでの業界の常識を変え、世の中を変えようとする取り組みを紹介する。

アリモノの組み合わせで革新が起こるか?
〜部屋のライトに何かがくっついて
生活が変わるか?〜
カテゴリー:ビジネス

世の中がどんなにAI化されても、変わらず使っていくものがあります。
その一つがシーリングライト。いわゆる、天井のコンセントにカチッとはめ込むライトです。

円形のものが一般的に家庭についているもので、引っ越しのときには持っていきます。マンションであっても、標準装備ではないことが多く、自前のそれを持って動いているわけです。

シーリングライトは、それ自体も進化を遂げてきました。
たとえば、もうずいぶん前からリモコンが付いています。オンオフや明るさ調整、タイマーまであります。LEDになってからは、色も調整できるようになり、この10年位で成熟化を迎えたように思えます。

ですが最近また、シーリングライトに変化の兆しがあります。なにかと一緒になって、新しい価値を提案しようとしている、ということです。

(1)絵が出るpopIn Aladdin(ポップインアラジン)
プロジェクター設置は結構難しいです。ベスポジは天井から吊るす方法、いわゆる「天吊り(てんづり)」。
でもそれは難易度がかなり高い。天井施工も必要だし、かなり大掛かりになります。そんなことをモヤモヤ考えているうちに、住宅上の制約から「テレビでいいかぁ」と諦めてきました。

そこで登場したのが、このpopIn株式会社が発売したpopIn Aladdin。なんと、シーリングライトにプロジェクタが内蔵してあり、電気を消せばプロジェクターとして壁にいろんなものを映写できます。
すでに色々と紹介され(https://japanese.engadget.com/pr/popin-aladdin/)、もちろん話題になっています。

ぱっと聞くと、ホームシアター派にとって夢のようなガジェットのようです。しかし、コンセントから吊り下げるので、小型化が必須。そのため、プロジェクタとしての機能が犠牲になってしまいます。そうすると、やはりプロジェクタの命である明るさ(ルーメン)や画素の確保が課題になるわけです。

ぼくが期待していたのは、このシーリングライトが、リビングをホームシアターにかえるという価値提案だったのですが、技術的にそれができないわけです。ということで、このAladdinは、ターゲットを変えています。実はこれ、寝室用という提案なんですね。

寝室で子供にプラネタリウムをしてあげたりと、寝る前の寝室をエンタメ空間に変える。。。
もっと単純には、そもそもあまりスペックを求めない寝室テレビの置き換えです。

とはいえ、寝室テレビを壁に映したりするのも、毎日のことになると面倒で、やはり普通の32インチ程度のテレビに戻ってしまうのでは、と思います。あと、寝る前に子供と…という使い方も、頻度としては極めて少なくなりそうです。

また、いくら暗くしても、暗くて画素の荒い映像は目がつかれるものです。このライトは700ルーメンで800P、明るい部屋ではかなり見えにくく、大きく引き伸ばせば画素も足りなく感じるでしょう。
とはいえ、本格的なプロジェクタとしての機能を追求すると、あまりにも大きくなりすぎて、現在の技術では組み合わせが難しいというジレンマを抱えています。

今後は、技術力がアップして4K(2160P)、せめてフルHD(1080P)まで画素を高められるのか。そうすればかなりの感動を覚えますし、今のテレビの置き換えを検討してくれるはず。ただ、大きさや価格を考えると、やはりいまの段階では難しそうです。ポップインさんにももちろんその野望はあるでしょうが、いまはまだ寝室でトライ・アンド・エラーを繰り返す段階なんでしょうね。

さらに個人的には気になることが。映像の技術は目まぐるしくかわります。シーリングライトという普遍的なハードと、画素などの陳腐化が早いプロジェクタを組み合わせることで、ユーザーにとっては判断が難しいプロダクトだと思います。結局は使わなくてゴツいだけのシーリングになってしまうと嫌だなと。

(2)音が出るAIR PANEL LED THE SOUND
次に大手メーカーのパナソニックが創ったのが、このAIR PANEL LED THE SOUND

実はこれ、地味にうれしいシーリングライト。これまで長きに渡ってライトを開発してきたパナソニックらしく、見た目は普通の?、いや少し変わったライトです。でも、インテリアには馴染みますね。

このライトの特徴は、Bluetoothスピーカーがライトについていること。そうです。音が天井から降ってきます。さきほどのAladdinとは違って、もっと単純に音が出せることにこだわりました。スマホから音楽を飛ばして天井から降らせる。まさに「サウンドシャワー」ですね。

見た目もプロジェクタのそれと比べてスッキリ。割り切りがあります。

意外とこういうシンプルなものが受けるのかもしれません。
プロジェクタもそうですが、スピーカーもプロジェクタに設置するのはとても困難。
え?スピーカーを天井に吊るすことある?とお思いでしょうが、たとえば飲食店などではすごくよいですよね。

これやろうと思うと、はい設置工事です。天井に穴を開けてスピーカーケーブルを這わせて、、、と。新築や改装のときでないと難しいですね。ある意味、それをなくしてくれるソリューションです。

あと、個人宅でも実はスピーカーの天吊りの要望が高くなっています。
ホームシアターのサラウンドフォーマットが革新的になっていて、いまはDolby ATOSやDTS:Xなどを正確に再現するには、天井スピーカーが必要になっています。好きな人は工事してまでスピーカーを吊るしているのですが、ほとんどは諦めます。

そこでこのスピーカーならできるのでは!と思ったのです。
が、無理でした。笑。単純にBluetoothスピーカーだったので、AVアンプとはつながりません。

しかも、音響も期待できるほどのものではないとの感想もきくので、スピーカーとしての性能もさほど、、、というもののようです。さきほどのように、ガヤガヤとしたお店で使うのもちょっと無理な感じでしょうか。
ということでこれ、ユーザー像が見えてこないのです。。。

パナソニックさん、まずは音響性能をアップしてください。そして、個人的には最終的にこれがAIスピーカーになればいいなと思います。笑。

デジタル時代になって、シーリングライトにいろんなものがひっついて、新たなソリューションがではじめています。まずはそのチャレンジには大賛辞!ですが、今はその萌芽期なので、オビに短しタスキに長しな状態といえます。技術よりもユーザー像の深耕を一旦優先させて、「アリモノの組み合わせ」がもつパワーを見せつけてほしいものです。
技術力の向上以上に、メーカーさんの割り切りが大切ですね。

「昔からあるものに、新たなものを足せばどうなるのか?」
ただしそこで終わってはいけません。
「この組み合わせは、一体何の置き換えになるのか?
1+1=2で終わっていないか?」
そして、「そこにユーザーはいるのか?」
どの業態にもあてはまることですね。上記の質問を皆さんのビジネスにも当てはめてみてください。